大気汚染防止法が令和2年に改正され、建物の解体等工事における石綿の飛散を防止するための規制が順次強化されています。
大気汚染防止法は、建物の解体等工事における規制対象外の建材からの石綿の飛散や、不適切な事前調査による見落としといった問題に対処するため、令和2年の法改正により規制を強化しました。
また、元請業者に除去作業で取り残しがないこと等を知識を有する者に目視で確認させること等、違法な除去作業に対して直ちに罰則を科す直接罰も施行されました。
さらに、令和4年4月1日以降は、一定規模以上の解体等工事の元請業者に、石綿含有建材の有無にかかわらず、事前調査の結果を都道府県知事に報告することを義務付けました。令和5年4月1日以降は、この事前調査を必要な知識を有する者(建築物石綿 含有建材調査者等)に依頼することも義務化されます。
これらの法改正による規制強化は、当然、建物の解体工事を行う元請業者の負担を増大させ、その費用の高額化や工期伸張に直結することになり、現場ではすでにその傾向が現れています。
ところが、不動産取引の場面ではこの問題が十分に認識されておらず、今後、建物解体時に想定外の負担を強いられた買主が、売主や仲介業者に対して契約不適合責任や説明義務違反を追及するといった法的トラブルが増大するものと懸念されています。
そこで、売主や宅建業者は、引渡し後に買主による建物の解体が予定されている場合には、特約や重要事項説明で買主に注意喚起することが必要になってきます。また、専門調査の結果を特約容認事項に盛り込んだ売買代金に反映させる対応も必要でしょう。